片思い経由、恋愛行き


「あーっ!みずきだ!おはよーっ!」



突然聞こえてきた聞き覚えのある声。



たった今まで見ていた向かい側のバスから、男の子が窓から顔を出してこっちに手を振っている。



少し遅れて、その子のお母さんらしき若い女の人もバスに乗ってきた。



その人は、俺たちに微笑みながら会釈してくれた。




…どうして海斗くんたちが…!?



「今日は海斗が実家に帰っちゃうの」



状況を読めていない俺を見て、横から成海さんが説明してくれた。



「そ、そうなんだ」



…昨日ほんの少し会っただけだけど、なんだか寂しい気がするなぁ。




「またね、海斗くん」


「おう!げんきでな、みずき!ゆずちゃんもまたねー!」



俺の言葉ににこにこと笑いながら応えて手を振る海斗くん。



扉を閉めたバスはゆっくりと動き出し、坂道を走っていった。





……この一部始終を、達也は目を丸くしながら見ていた。



もちろん成海さんがそれに気付かないわけがない。

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