片思い経由、恋愛行き
…………一瞬で後悔した。
目の前には、見たことのない表情。
目に涙を溜めて、唇をぐっと噛み締めている。
ズキンと胸が痛む。
女の子を泣かせてしまうなんて、最低だ。
…だけど気持ちとは裏腹に、俺の口は止まることを知らない。
「達也の気持ちも、自分の気持ちも無駄にするのか!?俺の気持ちだって…「ッ瑞樹!!」
興奮して続けた俺の言葉を、今度は郁也が遮った。
「…バスが来た」
そう言って顎を一瞬くいっと上げる郁也。
その先には、成海さんが乗るバス。
目の前に停まった車両は、ドアを開けて成海さんを迎えた。
「………」
何も言わずに彼女はバスに乗る。
振り返ることもなければ、俺と目を合わすこともなかった。