片思い経由、恋愛行き
「…瑞樹くん、何も分かってないよ」
……え。
思わず顔を上げた。
目の前には、悲しいような呆れたような、複雑な表情をする彼女の顔。
…俺、何も分かってないの…?
「ごめん…どういうこと…?」
「…分からないんだったらいい」
俺が質問すると、ぴしゃりと即答。
…何なんだ…!?
成海さんの態度に困惑していると、バスは停留所に停まった。
坂下ではない、その1つ前の停留所に。
「もう…朝あのバス停でお話することは、ないね。…楽しかったよ」
と言い、成海さんは立ち上がり、なぜかここで降りて行ってしまった。
…出口付近で一瞬、唖然とした俺に向かって、悲しい顔を残して。