片思い経由、恋愛行き


仕方なく手元にあったコートを羽織る。



重い足取りで庭に出て適当に草むしり。



「それじゃあよろしくね。行ってきます」


「ん、行ってらっしゃい」



支度を終えて出てきた母さんは、分厚いジャンパーを着て、今日もパートに出かけて行った。





それと入れ替わりに、



「あっ、みーずきー!!!」



と、俺の名を呼ぶ甲高い声が耳に入った。



「ここみずきんち?」


「そうだよ」


「くさむしり?だっせーな!」



なんて屈託のない笑顔で俺を嘲笑う男の子、海斗くん。



「…仕方なくだよ。
それより久しぶりだな。遊びに来たの?」


「うん、ゆずちゃんのいえにおいわいをもっていくんだ!」


「お祝い?」



何のお祝いなんだろう?



成海さんの誕生日はまだ先のはずだけどな。
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