片思い経由、恋愛行き


「…どういうことだよ、それ?」



俺より先に、郁也が口を開いた。



「きのうおいわいにいったらね、おうちのなかにダンボールがいっぱいあって…」



目に溜まったままの涙をこぼさないようにこらえながら、海斗くんが説明しようとしてくれる。



少し遠くなった意識の中で、2人の会話をじっと聞くことにした。





「どうしたの?ってきいたら、みんなでおひっこしするんだよって。てんきんってやつがりゆうだって…」


「転勤?どこにだ?」


「……ほっかいどう」




…北海道……遠いなぁ。





「ほんとはきのういいたかったんだけど、みずきにはおしえちゃだめだってゆずちゃんが…」


「口止めされてたのか?」


「…うん。…でもみずきがかわいそうだから…」



海斗くんの語尾が吃った。
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