片思い経由、恋愛行き
「瑞樹はそれでいいのか?」
「え?」
「後悔…してないわけ?」
黒い瞳に俺を映して静かにきいてくる。
「…うん。してない」
俺も同じように答えた。
「あの日想いを伝えられただけで満足。
…郁也たちのおかげだよ。ありがとう」
そう言ってまた微笑んでやる。
あの日、郁也たちが手を引いてくれたおかげで、俺は勇気を出せた。
もうきっと俺の隣では笑ってくれないだろうけど、あのまま何もしないで後悔するよりは何倍もましだった。
郁也たちには、感謝してもしきれないよ。
「…お前がそれでいいって言うなら俺はもう何も言わねぇ」
俺のお礼には応えず、郁也はそう言ってそっぽ向いてしまった。
どこか照れくさそうにしていることは、あえて見なかったことにする。