片思い経由、恋愛行き
そうこうしているうちに、向かいの曲がり角からバスの姿が見えた。
正面の案内板には、“華咲海岸行き”の表示。
俺が乗る、高校生活最後のバス。
ゆっくりと停留所に近付き、俺たちの前で停まった。
「じゃあね。…高校3年間ありがとう。春からもよろしくね」
その場に留まる郁也に向かってお礼を言う。
「…何だよ。ほんと気持ち悪ぃな」
「ははは、言うと思った」
返ってきたのは予想通りの返事。
あまりのドンピシャに思わず笑ってしまった。
「さっさと乗って帰れ。じゃあな」
シッシッと、犬を追い払うかのように俺に手の甲を向ける郁也。
無愛想っていうか、なんていうか、やっぱり素直じゃない。
そんな大好きな親友を残して俺はバスに乗りこむ。
窓越しに手を振りながら、思い出ある高校を去った。