片思い経由、恋愛行き
前から3番目の、あの席に座る。
車内に乗客は俺1人。
そして運転手はお馴染みのおじさん。
「兄ちゃん、卒業おめでとう」
バスを走らせながら俺にそう言ってくれた。
「ありがとう。…もうこのバスも最後だね」
「あぁ、今までありがとうな」
「こちらこそ。お世話になりました」
バックミラー越しに目を合わしながら、軽く頭を下げる。
今日をもって、このバスは廃線となる。
本当はもっと早くその話は出ていたけど、おじさんがせめて俺の卒業までと交渉してくれていたらしい。
本当に感謝しなければいけない。
…そして、そんなおじさんも、今月いっぱいで定年退職。
おじさんの経歴の何分の一ほどしか俺は知らないけど、“お疲れ様”って、心の底から伝えたい。