片思い経由、恋愛行き
「ねぇ」
考え込む俺の肩をとんとんと叩いてくる成海さん。
ふと見れば下から見上げてくる綺麗な瞳。
「わたしがあの日最後に言った言葉……教えてあげよっか?」
そう言ってふふふと微笑む。
あの日電車が発車する直前、成海さんは俺に向かって何か言った。
だけどそれが俺に届くことはなくて…
この2か月、もう恋は終わったんだから、と忘れたつもりだったけど、…実は心のどこかで気になっていた。
「…何て…言っていたの?」
知りたくて、知りたくて、仕方ない。
それが例え俺の望んでいない言葉だとしても。
この人の言葉は、“聞こえなかった”で片付けたくない。
「じゃあ…耳、貸して」
彼女がそう言った瞬間、栗色の髪が俺の頬にそっと触れた。