片思い経由、恋愛行き
「成海さんってさ…「あ、来た!」
俺の言葉を遮るように成海さんが叫んだ。
指差す方向には、いつの間にか姿を現した緑色のバス車両。
「もう時間だよ、早いね…」
薄い笑顔でそう言う彼女の表情を見る限り、悪気はなさそうだ。
「そ、そうだな…」
話を遮られたことと、もう別れないといけない寂しさに、俺の声が少しかすれた。
そうこうしているうちにもバスはどんどん近づいてくる。
中央駅行き小桜高校前廻り線
成海さんが毎朝乗っていくバス。
「続きはまた明日ね」
「うん」
バスが目の前に停まった。
乗降中ランプが光り、前の扉がゆっくりと開く。
車内には1人、昨日のおばあさんが乗っていた。
「じゃあ、お先に。バイバイ」
にこっと笑った成海さんがバスのステップに片足をかけた。