片思い経由、恋愛行き
「瑞樹ー」
後ろから名前を呼ぶ声が聞こえた。
「おはよ」
振り返った俺の元に来たのは、郁也。
「おはよう」
「なあ、今日はどうだった?」
横に並んで一緒に教室に向かう郁也から、いつもと同じ質問が飛んできた。
「何が?」
真顔できき返す。
今日はあえて素直には答えてやらない。
「何って、あの女の子の話に決まってんだろ。…ま、どうせ今日も話せなかったか」
そう言って隣の男は鼻で笑う。
「ふふん」
俺も意味深げに鼻で笑ってやった。
“今日の瑞樹サマはいつものただのヘタレ男とは違うんだぞ”、という意味を重々に込めて。