片思い経由、恋愛行き
08:00
向こうの曲がり角から姿を現したバスに乗り込む。
「おじさんおはよう」
「おう、おはよ」
いつものように運転手のおじさんに挨拶をして、運転席のすぐ後ろの席に座った。
「兄ちゃん、最近なんだか楽しそうだな。何かいいことあったのか?声のトーンが今までと違うぞ」
バスが走り出してすぐ、おじさんに言われた。
「ふふふ、おじさん聞いてくれる?俺ね、好きな女の子がいるんだ」
「おおーそれはいいね」
「それでね、やっと最近その子と友達になれたんだけどさ、もうその子が可愛くって可愛くって…」
「へぇー」
にやけながら話す俺に、おじさんも同じようににやけて相槌を打ってくれる。
バックミラー越しに見えるおじさんの口元の緩みがその証拠。
「それで今日は、俺と話すのが楽しいって言われちゃってさ!
俺、もう嬉しくってしょうがないんだ!!」
空いている隣の席をバンバンと手で叩いて、まるで女子高生か、と言われてもおかしくないくらいに騒ぐ俺。
おじさんの目が微笑ましいと言うように細い線を描いている。
「それはめでたいね!
もう彼女も兄ちゃんに気があるんじゃないか?」
「あ……」
盛り上がった俺に合わせて言ってくれたおじさんの一言で、ふと頭によぎった。