片思い経由、恋愛行き


集合場所と時間を決めて、連絡先を交換。



携帯の電話帳のメモリーに、新たに“成海柚音”というデータが入った。



その文字を見るだけで、自然と口角が上がる。




「ふふ、瑞樹くんのアドレスだー」



そんな言葉が聞こえてきて、ふと顔を上げた。



視界に入ったのは、なぜか嬉しそうに笑いながら携帯の画面を見つめる成海さん。



…また胸がキュンとなる。



俺の連絡先を知って「嬉しい」と喜んでくれる彼女が、今すごく愛おしい。



同じ気持ちでいてくれることって、こんなにも胸が温かくなるんだ。





「あ、もうこんな時間。公園に行かなくちゃ」



画面の時計を見たのか、用事を思い出した様子の成海さん。



「ごめんね、また明日」


「うん、バイバイ」



俺が小さく手を振ると、成海さんは一瞬にっこりと笑って急ぎ足でこの場を去っていった。





―――雪がちらついてきた午後。



“また明日”と言った彼女の笑顔が頭から離れない。
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