片思い経由、恋愛行き
「じゃ、行こう」
そっと彼女の手を取って再び歩き出す。
手のひらから成海さんの温度が伝わってくる。
女の子の手を握ったのって、幼稚園の頃ぶりかもしれない…
自然と出たこの行動に、自分でもびっくりだ。
成海さんは手を振り払ってこない。
…これはどういうことだろうか…?
この状況を嫌がらないことも、その顔がほんのり紅いのも…
…期待してもいい…?
特に会話もなく海岸沿いを数分歩くと、小さなレストランの前に着いた。
「ここで働いてるんだ。
いい奴だから、きっと成海さんも仲良くなれると思うよ」
「うん」
俺的にはあまり仲良くなってほしくないけど…
複雑な気持ちも入り混じりつつ、さりげなく手をつないだまま店内に入っていった。
…なんで彼女をここに連れてきてしまったんだろう、なんて後悔するとは、この時の俺は微塵たりとも思っていなかった。