天使がくれたもの(全編公開にします)
夜が近づくころ、3人は純子の家をあとにした。

突然足を止めた伸哉に、2人は不思議そうに振り返る。


「…ごめん、忘れもんしたわ。先、帰っといてくれ!」


その言葉を置いて、伸哉はもう一度…純子の家に向かって走りだす。


「…忘れもんとか、あったっけ? あたし、帰るとき見たんやけど…」


舞は、帰るとき最後に見た部屋を思い出す。


「…岸田が忘れもんなんちゃう?」


伸哉の気持ちを見透かすように答える勇心。


「…あぁ、そういうことか」


舞は、このあと…伸哉がしようとしていることに気がついた。

2人は、ゆっくりと舞の家に向かった。

…気まずい空気がただよう。

家の前に着くと、勇心は何か言いたげに少し口を開いた。…だが、何も言わず手を振り…去っていく。


「…ごめんっ」


最後に見せた彼のつらそうな表情が目に焼きつき、舞は背中に向かって呼び止めた。
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