天使がくれたもの(全編公開にします)
「あかんって。…簡単に許さんといてや!」


彼女の優しさで、よけいに息をつまらせる。

美衣子は、舞の頬にあてた両手を離し…優しい瞳で小さく笑った。


「学校を辞めたこと気にしてんやろ?…舞のせいちゃうよ」


クスクスと笑いかける彼女を、舞は不安そうに見あげた。


「…ここっ」


彼女は、自分のおなかを指さした。


「え…?」


何がなんだか理解できず、舞は目をぱちくり開けた。


「…2月からおるんよ」


優しそうな表情で、おなかを眺め…ゆっくりと手をそえる彼女。

舞は驚いて声が出なかった。


「…テルオの?」


身を乗り出し問いかける舞に、彼女は幸せそうにうなずいた。


「だから、舞のせいじゃないねん。…それにな、今やっと普通に舞と話せてうれしいねんで。だから、謝るのはなし!」


そう言って、美衣子はにっこりとほほ笑んだ。

2人は、半年間のすき間をゆっくりと埋めるように笑い合った。


…でも“舞のせいじゃない”と言う彼女の言葉は、きっと自分を気遣ってのものだろうと…舞は思っていた。

学校を辞めることに対しての決断の1つに…きっと自分のことが入っていたに違いない。

舞は改めて、彼女の優しさを胸に感じた。

…こんな友達は、簡単にできない。

…出会えて本当に良かった、と。
< 203 / 236 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop