天使がくれたもの(全編公開にします)

「まぁ、用事で近くまで来たってのは口実なんやけどな」


照れくさそうな快の言葉に驚き、舞は赤面する。


「舞ちゃんって好きな子おったりするんけ?」


少し間をおいてから、快はそう問いかけてきた。

頭の中に、一瞬、カグの姿が浮かぶ。

目に映るのは、彼によく似た快の真剣な表情。


「……おらへん」


舞は快によく思われたいがため、カグのことを言わなかった。


「ホンマに? マジで? 彼氏とかおらんの?」


顔や髪形。声とかしぐさは似ているけれど、やっぱり違う感じもする。

舞はずっと、カグと重ねて快を見続けている。


「うん、おらん」


笑顔でうなずく。

すると、快もにっこり微笑み、そのまま顔を近づけてくる。


……あ。


一瞬の出来事だった。

本当に一瞬のことで、舞の頭の中は真っ白になる。
< 228 / 236 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop