Deja Vu【SS】



それから退院までの間も、彼は時間が許す限り一緒にいてくれた。
医者から勧められたのもあるけれど、きっとそれがなくても、彼はそうしただろう。


そういう人だ。
この一ヶ月で、それだけは自分で理解した。
さっき見ていた夢からもわかる。

彼は、無償の愛を私にくれる。
きっと以前の私は、同じだけを彼に返していたんだろう。

けれど今まで、恋人らしいことはなに一つしていない。
我慢してくれているのだ。
記憶のない私を言いくるめて、そういう空気に持っていくことは、簡単なことだろう。
でも彼はそれをしない。



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