Deja Vu【SS】
三日前に退院してからずっと、私は彼の家にいる。
それが当然であるかのようにここに連れてこられたし、近所の人も私を見て、顔見知りのように挨拶してくれる。
なのに私は、彼のことを知らない。
目を覚ました私に半泣きの彼の顔を見て、あなた誰、と言ったのは、一ヶ月前、病院のベッドの上でだった。
記憶障害なのだということは、自分でもわかった。
呆然とした彼の顔と、愛情を含ませて私を呼ぶ声から、どうやら私と彼が恋人同士らしいということを察したのだ。
しかしなにしろ、彼のことを知らないのだ。
いったい誰なのかも、どうやって知り合って、どういう経緯で恋愛関係になったのかも、それまで私が彼にどう接していたのかも。