桜雪
「『死ねなかった』んじゃなく、『死ななかった』んです。どういう意味か分かりますか?」
 
彼女の声は少し震えていた。
私は何も言えずに、婦人の怯えとも哀しみともつかない目を見ているしかできなかった。
 
「私と彼が最期の場所として選んだのはあの丘の桜の木の下でした」
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