桜雪
「そして、最期には、絶望の色を浮かべて死んでいったのです…。
私は彼を見捨てたと同時に、見殺しにもしたのです。そして、彼をあの桜の木の下に埋めたのです。そのまま立ち去ろうともしましたが、それではやり切れない思いがあったので、せめてもの償いとして彼も好きだった桜の木の下にその骸を葬ったのです。
私はその後、元の家庭に収まりました。ずるいですよね…。
そして、彼が許してくれるまで、私はここへ訪れなければならないのです」
 
そこまで話すと、婦人は人形のように黙ってしまった。
 
私は今ふと思い付いた疑問を口にしてみた。
< 24 / 35 >

この作品をシェア

pagetop