桜雪
屈んで花びらを拾い、目を上げた瞬間、それは私の目に飛び込んできた。
 
あの、少し離れた小さな丘。
そこにある桜の木。
 
そこには、あの婦人、坂井君枝が立っていて、木を見上げている。
 
でも、彼女の周りだけが少しぼやけている。
それと同時に彼女の周りにだけ桜の花が舞っているのだった。
まるで、あの春の時のように。
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