ふたり。-Triangle Love の果てに
第1章―An Invitaition to Love
~片桐真琴~
「もうっお兄ちゃん、早く起きなさい」
もそもそと動く淡いブルーの布団に向かって、いつものように仁王立ちの私。
毎朝毎朝、よくもまぁ同じ事を言わせるものだとあきれてしまう。
「いい加減にしなさい」
力ずくで布団をはぎとると、眩しさに耐えかねたように顔を歪めながらお兄ちゃんが唸った。
「相変わらず手荒いなぁ」
「さっさと起きてくれたら、私だってこんなことしないわよ。ほら、早く朝ごはん食べちゃって」
少しクセのある髪がはねて地肌が見えている上に、二重で甘めの目が寝起きなだけにますますトロンとしている。
「ほら早く、遅刻しちゃうわ」
「はいはい」
私はダイニングに戻ると、手際よくテーブルに朝食を並べていく。
「おー、今日もおいしそうだな」
洗面所から出てきたお兄ちゃんは、すっかり目が覚めたよう。
席につくなり、淹れたてのお茶を熱そうに一口すする。
「最近さ、何か良いことあったの?」
そんなお兄ちゃんの問いかけに、私は不機嫌な声で答える。
「ないわよ、どうして」
「最近オムレツによくチーズがのってるから」
「チーズくらいで…」
「だっておまえはいつも節約、節約ってうるさいだろ。前までチーズがのってたことなんて、ほとんどなかったし」
普段はボーッしてるくせに、つまらないことには気付くんだから。
さっさと支度をしないと仕事に遅れるでしょ、と言いたいのを我慢する。
「それはそれは失礼しました。チーズは特売だったものですから」
依然としてムッとして答える私にお兄ちゃんは、そっか、と優しく笑って箸を手に取った。
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