ふたり。-Triangle Love の果てに


「真琴ちゃんはお料理が上手だから助かるんですよ。手際もいいし。真琴ちゃんがいなかったら、夜の定食は始めてなかったと思います」


ゆり子さんの言葉はお世辞でもうれしかった。


「勇作さんは幸せね。こんなしっかりした妹さんがいて」


「でもゆり子さん。お兄ちゃんが結婚できないのは、しっかりしすぎた妹のせいなんですよ」


私はすかさず言った。


「またそんなこと言って」


くすくす笑うゆり子さんの前で、お兄ちゃんは苦笑していた。


でも私の言ったことはまんざら冗談でもない。


もうすぐ30にもなろうとするお兄ちゃんは結婚どころか、浮いた話すら、ない。


私がいるからだ、そう思う。


妹と一緒に住んでいると、仮に恋人ができたとしても部屋にあげにくいだろうし…


だから別々に暮らそうと提案したこともあった。


だけどお兄ちゃんはこう言って笑った。


「どうせどちらかが先に結婚したら、別々に暮らすようになるんだ。俺たちはふたりきりの家族なんだから、今からわざわざ離れて暮らさなくてもいいだろう」って。


きっとお兄ちゃんは私が結婚するまで、自分は独身を通すつもり。


そういう人なの。


いつだってそう。


私のことを一番に考えてくれて、自分のことは後回し。


私は少し多めにすき焼きの肉を器に盛ると、お兄ちゃんの前に差し出した。



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