ふたり。-Triangle Love の果てに


今、目の前にいるお兄ちゃんはあの時のように溢れ出てくる怒りを必死に抑えてる。


圭条会と須賀一家が、また私たちの目の前に現れたから。


そしてふさがりかけた過去の傷口を開いてしまったから。


でも今日は怒りを抑えた口調で言った。


「Yesterdayの仕事は、真琴次第だと思うよ」


「私次第…」


「続けるにしても辞めるにしても、結局俺たちは過去から逃げ出せないってことだよ」


確かにそうかもしれない。


あそこで働いている限り、あいつらの影はつきまとう。


辞めても、逃げ出したと一生自分を責めるに違いない。


どちらにしてもあいつらの呪縛からは逃れることはできない。


「俺たちはさ、もう前を向いて歩くしかないんだよ。振り返れば振り返るほどにつらいんだから」


「わかってる」


ねぇ、お兄ちゃん。


お兄ちゃんだってあんなことがなければ、今頃結婚して幸せな家庭を築いてたでしょうね。


こんな妹の心配なんかせずに、自分の人生をしっかり生きることができたかもしれないのに。


世の中には、何もかも恵まれた人がいるのに、どうして私たちはこうなっちゃったのかな。


神さまってちょっと不公平。


豊浜の天宮先生が聞いたら「そんなことない」って叱られちゃうかもしれないけど、でもそう思わずにはいられない。


なんで神さまは、私たち兄妹にこんな運命を背負わせたのかって。


お兄ちゃん。


お兄ちゃんもそう思うでしょ?


…ね?


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