ふたり。-Triangle Love の果てに
初めて森を真琴を会わせたのは、4年ほど前だ。
施設を出た真琴と俺は一緒に暮らすことになり、引っ越しを手伝いに来てくれたのがきっかけだった。
彼は一目で妹が気に入ったらしい。
それ以来ことあるごとに打ち合わせだとか言って、俺たちの部屋にあがりこんでいた。
そんなことが頻繁にあり、次第に真琴も森が家にいる時は外出するようになっていた。
あいつなりに森を避けていたのだと思う。
彼も自身の企画が採用され仕事が忙しくなっていき、俺たちの間は少しずつ距離ができていった。
だからこうやって向かい合って話すのは久しぶりだったのに、真琴のことをとやかく訊かれることで、一気に気持ちがしらけてしまった。
「真琴ちゃん、もう22?23だっけ?きれいになったんだろうなぁ」
「どうかな」
「バーテンしてんだろ?今度連れてってくれよ、真琴ちゃんのいる店。久々に会いたいしさ」
「俺が行くと、いい顔しないんだよ、あいつ」
暗に断ろうとするも、押しの強さは学生時代から変わらない。
いや、それどころかパワーアップしている。
「いいじゃん。何ならどこのバーか教えてくれたら、一人で行ってみるからさ」
いやいや、森を一人で行かせるなんて心配だ。
大人の女になった真琴に言い寄る可能性もある。
仕方なく、俺は森と飲みにいく約束をしてしまったというわけだ。
「楽しみだなー、真琴ちゃん」
ニヤニヤする森の前で食べるカツ丼は、最高にまずかった。