ふたり。-Triangle Love の果てに
彼女とは以前取材したことのある、隠れ家的なレストランで食事をした。
日曜日のランチだということで予約でいっぱいだったが、店側が俺のことを覚えていてくれたようでなんとか融通してもらえた。
「すみません、無理言って」頭を下げる俺に店長がかぶりを振った。
「何てことないですよ。片桐さんの記事のおかげで、毎日満員御礼で感謝しきれないほどです。サービスさせていただきますよ、デートですもんね」
「いや、その…まぁ」
返答に困る俺。
このレストランは女性が喜びそうなオーガニック野菜をふんだんに使ったランチメニューが人気だ。
案の定、千春ちゃんは「初めてこういうところに来た」と嬉しそうだった。
「片桐くん、モテるでしょ」
「さっぱり」
「嘘。こういうお店を知ってる男の人って、女心のツボを押さえてるっていうか、どうやったら喜んでもらえるか知り尽くしてる感じがする」
「取材をしていると、どうしても女性に人気の店に目がつくんだ、ただそれだけ」
「そっかなぁ」
「そうだよ」
そして千春ちゃんは何かを考え込むようにフォークを置いた。
「でも確かにそうかも。片桐くんって昔から気を引こうとして、あれこれ計算するタイプじゃなかったもんね」
俺も手を止める。
「通りで6年生のクラスの女子のほとんどが、片桐くんのこと好きだったわけよね」
「まっさかぁ」
「ほんとよ。だって片桐くん、みんなに優しいんだもん。おしつけがましさもない、わざとらしくもない。誰彼なくみんなに優しかった。そんなのに弱いのよ、女って」
何て答えていいのかわからず、俺は鼻の頭をかいた。
「その甘いルックスも罪よね。くっきり二重できれいなくせ毛。ハーフみたいだもんね」
そう言って、千春ちゃんはまじまじと俺の顔を見る。
「ね!その髪、切らせてくれない?」
「ええ!?」
「いいでしょ?結構伸びちゃってるし!この前は名前を貸してあげたんだから、切らせてよ」
冗談っぽくナイフを手に取って身を乗り出す。
「いや、まぁそれはいいんだけど…でもどこで?」