ふたり。-Triangle Love の果てに


「ねぇ違う店にしない?あなたがここのマスターのオリジナルカクテルがおいしいって言うから来たのに、飲めないなら意味ないじゃない」


「まぁそう言うなよ。すまない、とりあえずビールを2つ」


男性は苦笑いをしながら、人差し指と中指を立てた。


「ビール?私はいらない。ここまで来たのにビールだなんて。そうだ、そこのあなた。何かカクテルを作ってよ」


挑戦的な視線が私に向けられた。


「どのようなものにいたしましょうか」


「そうね、私にぴったりなものを」


この人にぴったりのカクテル?


どうしよう、こんなオーダー初めてだわ。


だけど、負けたくない。


マスターほどベテランでかっこよくないけれど、私だって一応バーテンダーなんだから。


「かしこまりました」


軽く頭を下げると、私はグラスを取りだす。


その様子をじっと見ていた男性が呆れたように「やれやれ」と笑って額を撫でた。


その仕草で確信したの。


あなただって。


ずっと、ずっと昔。


泣いてる私の前で困ったようにそうやって額を撫でた…


そして言ったの。


『じゃあマコって呼ぶからさ、それならいいだろ』って。


相原泰輔…


泰兄(たいにぃ)よね…


施設で共に過ごした、同じ悲しみを背負った「仲間」…
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