ふたり。-Triangle Love の果てに
第4章―Love or Hate
どう話がついたのかわからないけれど、例の男たちは帰っていった。
そして泰兄も帰っていった。
一度も私を見ることなく、まるで見知らぬ誰かとすれ違うように…
「今日はもう帰りましょう」
恵美さんの言葉にマスターも頷く。
「送っていくよ、真琴ちゃん」
「いえ、大丈夫です」
「まさか、相原さんが圭条会の人だったなんてな。じゃあAGEHAもその系列か…」
「あなたは余計なこと言わないの!真琴ちゃん?本当に大丈夫なの?」
心配そうにのぞき込む恵美さん。
「ええ、平気です。もともと私と相原さんとは何でもありませんから。何でも…」
嘘よ、こんなにも胸がつぶれそうで苦しいのに。
かろうじて立ってはいられるものの、めまいと頭痛が私を襲う。
ねぇ、泰兄。
あなたは私に恋を教えてくれた人。
そして、生きる難しさを説いてくれた人。
そして…
私の心を誰よりも打ち砕いた人。
店を出た私はおぼつかない足取りで、まだ明け切らない本通りを歩いた。
彼にもらった大きなブーケを持って。
こんなもの、捨ててしまえばよかったのに。
それもできずに、こうやって抱きかかえて。
ついさっきまで花の香りに幸せを感じていたのに、今はその匂いさえもわからない。
自分の愛する人の正体を知ってしまった衝撃に、生きている心地がしなかった。
泰兄…
泰兄…
『やっとおでましかよ、組長代理の相原泰輔さん』
耳にこびりついたその言葉。
私はかぶりを振った。
圭条会だなんて…
組長代理だなんて…!
その上、もっと信じがたい言葉。
人を殺した…
もう心の中がぐちゃぐちゃ。
私が愛した人は、一体どんな人なの?
相原泰輔って、何者?
わからない、わからない、わからない。