ふたり。-Triangle Love の果てに
でもおまえはお母さんのお腹の中で、どんどん大きくなってゆく。
ヒタヒタと長谷部勇作に戻る日が近付いてくる。
生まれてくるな、毎日思ってた。
だからお腹の大きなお母さんが重たい荷物を持っていても、わざと手伝わなかった。
腰の痛みをこらえながら洗濯物を取り込んでいても、見なかったふりをした。
お腹の中で、死んじゃえばいい…
それくらい、おまえを憎らしく思った。
だけど、だけど…
お父さんとお母さんはこんな俺に言ったんだ。
「勇作が家に来てくれたから、家族が増えるんだよ。神さまがもっともっと幸せになりなさいってこのお腹の子を授けてくださったんだね」って。
そしてこうも言った。
「こんなにしっかりしたお兄ちゃんがいるんだもの、この子は幸せ者ね」って言いながら、おまえのいるお腹を撫でたんだ。
お兄ちゃん?
俺が?
夫妻を取られる恐怖に怯えていた俺に、「お兄ちゃん」という新しい役目が与えられた、そう思った瞬間、お腹の中のおまえが急に愛しくなった。
早く会いたいと思った。
元気で生まれてきてくれますように、と毎日祈った。
そして残暑が厳しい日の昼下がり。
おまえは生まれてきた。
その瞬間から、俺はおまえのたったひとりの「お兄ちゃん」になったんだ。
お腹はまるまる太っているのに、手足だけは妙に細くてアンバランス。
赤ちゃんってこういうもんなんだ、俺もこうやって生まれてきたんだ、と不思議な気持ちになった。
おまえに顔を近付けると、甘いミルクの匂いがして思わず頬が緩む。
泣いてはミルクを飲み、また眠ったかと思えば泣いて…
同じことを繰り返しているようだけれど、しっかりおまえは成長していった。
初めて俺の指を握った瞬間も、
初めて笑いかけてくれた瞬間も、
初めて「おにーたん」と言ってくれた時のことも覚えている。
いつも俺の後をついて回って、困ったくらいだ。
真琴。
抱き上げる度に伝わってくるその柔らかさと重みに、俺は幾度となく誓ったんだ。
おまえを守ってやるって。
どんなことをしても、幸せにしてやるって。
だって俺は、お兄ちゃんなんだから。
ヒタヒタと長谷部勇作に戻る日が近付いてくる。
生まれてくるな、毎日思ってた。
だからお腹の大きなお母さんが重たい荷物を持っていても、わざと手伝わなかった。
腰の痛みをこらえながら洗濯物を取り込んでいても、見なかったふりをした。
お腹の中で、死んじゃえばいい…
それくらい、おまえを憎らしく思った。
だけど、だけど…
お父さんとお母さんはこんな俺に言ったんだ。
「勇作が家に来てくれたから、家族が増えるんだよ。神さまがもっともっと幸せになりなさいってこのお腹の子を授けてくださったんだね」って。
そしてこうも言った。
「こんなにしっかりしたお兄ちゃんがいるんだもの、この子は幸せ者ね」って言いながら、おまえのいるお腹を撫でたんだ。
お兄ちゃん?
俺が?
夫妻を取られる恐怖に怯えていた俺に、「お兄ちゃん」という新しい役目が与えられた、そう思った瞬間、お腹の中のおまえが急に愛しくなった。
早く会いたいと思った。
元気で生まれてきてくれますように、と毎日祈った。
そして残暑が厳しい日の昼下がり。
おまえは生まれてきた。
その瞬間から、俺はおまえのたったひとりの「お兄ちゃん」になったんだ。
お腹はまるまる太っているのに、手足だけは妙に細くてアンバランス。
赤ちゃんってこういうもんなんだ、俺もこうやって生まれてきたんだ、と不思議な気持ちになった。
おまえに顔を近付けると、甘いミルクの匂いがして思わず頬が緩む。
泣いてはミルクを飲み、また眠ったかと思えば泣いて…
同じことを繰り返しているようだけれど、しっかりおまえは成長していった。
初めて俺の指を握った瞬間も、
初めて笑いかけてくれた瞬間も、
初めて「おにーたん」と言ってくれた時のことも覚えている。
いつも俺の後をついて回って、困ったくらいだ。
真琴。
抱き上げる度に伝わってくるその柔らかさと重みに、俺は幾度となく誓ったんだ。
おまえを守ってやるって。
どんなことをしても、幸せにしてやるって。
だって俺は、お兄ちゃんなんだから。