ふたり。-Triangle Love の果てに
アパートに戻ると、部屋は真っ暗だった。


段ボールの山にぶつかりながら、手探りで電気のスイッチを入れた。


どうやら真琴は仕事に出かけたらしい。


大丈夫なんだろうか。


今朝のあの様子を見ているだけに、心配でならない。


そうだ、シトラスに電話をかけて、今日はお店に出たか訊いてみようか。


それともYesterdayに真琴が出勤しているか訊いてみようか。


慌てて鞄の中をまさぐる。


しかし、ふいに泰輔兄さんの言葉がよぎった。


『おまえはいつまであいつの保護者を続けるつもりなんだ』


「くそっ」


俺は鞄をたたきつけると、着替えもせずにベッドに仰向けになった。


俺が一生真琴の兄貴だと言うと、彼は「だといいけどな」と答えた。


あの人は何もかもお見通しだ。


俺の心の奥底にある、決して許されない感情さえも見抜いている。


何年も必死で隠してきたのに。


俺は兄貴なんだ、何があってもあいつの兄貴なんだ!


そう自分に言い聞かせては、拳をマットに叩きつけた。

< 172 / 411 >

この作品をシェア

pagetop