ふたり。-Triangle Love の果てに


目の前でご飯をかきこんでいるのが、7つ年上の私のお兄ちゃん


------片桐勇作。


中央新聞社の記者をしてる。


おっとりした性格からか、入社した時からずっと地域面の担当だ。


最近になって地元のグルメや歴史、何かのイベントの取材に行ってはコラムを書くようになった。


小さな小さな片隅のコーナーだけど、私はお兄ちゃんの記事が好き。


読んでいると、あたたかな気持ちになってくる。


人柄が表れているんだと思う。


優しい優しいお兄ちゃん。


のんびりやさんのお兄ちゃん。


怒ったところを見たことがない。


そんなお兄ちゃんとふたり暮らし。


私が6歳の時にお父さんとお母さんが亡くなってからというものの、ずっとお兄ちゃんと一緒だった。


寂しくはなかった、と言えば嘘になるけれど、いつだってお兄ちゃんは私のそばにいて守ってくれたし、施設の友達もみんな優しかった。



たった一人をのぞいては…



「もう食べないの?」


「お腹いっぱいだから。それに寝る前に食べたら太っちゃうもの」


「全然食べてないじゃないか。やっぱり仕事、きついんじゃないのか」


うかがうような目つきが私に向けられた。


「ううん、大丈夫。いつか必ずお父さんみたいになるんだから。こんなことでネをあげるわけないでしょ」


ごちそうさま、と手を合わせた私をお兄ちゃんはずっと見てる。


「何ぼんやりしてるの。早くしないと本当に遅刻よ」


「おっと」


にらみつけた私に苦笑いしながら、お兄ちゃんは大きなオムレツを器用に箸で一口大に切った。


とろけたチーズが、細い糸を引いた。


< 2 / 411 >

この作品をシェア

pagetop