ふたり。-Triangle Love の果てに
目の前でご飯をかきこんでいるのが、7つ年上の私のお兄ちゃん
------片桐勇作。
中央新聞社の記者をしてる。
おっとりした性格からか、入社した時からずっと地域面の担当だ。
最近になって地元のグルメや歴史、何かのイベントの取材に行ってはコラムを書くようになった。
小さな小さな片隅のコーナーだけど、私はお兄ちゃんの記事が好き。
読んでいると、あたたかな気持ちになってくる。
人柄が表れているんだと思う。
優しい優しいお兄ちゃん。
のんびりやさんのお兄ちゃん。
怒ったところを見たことがない。
そんなお兄ちゃんとふたり暮らし。
私が6歳の時にお父さんとお母さんが亡くなってからというものの、ずっとお兄ちゃんと一緒だった。
寂しくはなかった、と言えば嘘になるけれど、いつだってお兄ちゃんは私のそばにいて守ってくれたし、施設の友達もみんな優しかった。
たった一人をのぞいては…
「もう食べないの?」
「お腹いっぱいだから。それに寝る前に食べたら太っちゃうもの」
「全然食べてないじゃないか。やっぱり仕事、きついんじゃないのか」
うかがうような目つきが私に向けられた。
「ううん、大丈夫。いつか必ずお父さんみたいになるんだから。こんなことでネをあげるわけないでしょ」
ごちそうさま、と手を合わせた私をお兄ちゃんはずっと見てる。
「何ぼんやりしてるの。早くしないと本当に遅刻よ」
「おっと」
にらみつけた私に苦笑いしながら、お兄ちゃんは大きなオムレツを器用に箸で一口大に切った。
とろけたチーズが、細い糸を引いた。