ふたり。-Triangle Love の果てに
「さて、と」
カップを置いた彼が私の肩を抱いた。
「誤解が解けたところで、一緒に寝心地でも試してみるか」
「……!」
私の反応を楽しむかのように、クックッと独特の笑いをする泰兄。
もう、この人はわざとそんなことを言って私をからかう。
「今から仕事なんだから、冗談はやめて」
むきになる私を見て、ますます笑う泰兄。
バッグをつかんでそそくさと玄関に向かう私の後を、彼はゆっくりとした足取りでついてきた。
「この部屋の鍵だ」
チャリンという金属音が心地いい。
両手で大切に受け取る。
「なくすなよ」
「うん。行ってくるわね」
彼が頷くのを見届けてから、私は玄関を出た。
泰兄ってば…
わざわざ私のためにベッドを新調してくれるだなんて。
無意識のうちに顔がにやけてしまう。
今日からここが私の帰る場所。
大好きな人との生活が始まった。
明け方に私が仕事から帰ってくると、泰兄はあの大きなベッドでひとりで眠っている。
AGEHAのオーナーを辞めてからはずっとパソコンの前に座っていたり、何かの本を読んだりしている。
私が帰るまで起きていることもあるけれど、たいていは先に休んでいる。
シャワーを浴びて、彼の隣にもぐりこむ。
どんなにそっとベッドに入っても、必ず気付かれて抱きすくめられてしまう。
「ただいま」と言うと「…ああ」と眠たげな声が返ってきて、彼はまた夢の中へ戻ることもあれば、そのまま服の中に手を入れてくることもある。
そうやって彼の胸で泳ぎ疲れた私は、太陽が昇る頃になってようやく眠りにつく。
だけどお昼を過ぎると、また誰かさんのキスが私の耳をくすぐる。
「…もう」と手で払っても、おもしろがるように耳元でその唇がささやく。
「起きろよ」
「…もうちょっとだけ。あと5分…」
「だめだ」
枕に顔を埋める私に、彼は覆い被さってくる。
甘い、甘い生活。
愛し、愛されて…
これを幸せというのね、きっと…