ふたり。-Triangle Love の果てに


芳ばしい香りにまどろんでいた私は、ゆっくりと瞼を持ち上げた。


愛しい人を探してぼやける視界の中で、手を横に伸ばす。


でもそこに彼はいない。


う…ん、と横になったまま伸びをしていると


「やっと起きたか」とリビングからマグカップを2つ手にした彼が現れた。


「泰兄が疲れさせるからよ」と何も身につけていない私は、リネンにくるまる。


「飲めよ」と軽く笑いながら、彼はベッドに腰かけてカップのひとつを手渡してくれた。


「とってもいい匂い」


コーヒーって好きな人が淹れてくれると、こんなにも幸せな香りがするんだな、と改めて思う。


男の人にこんなことをされたことがない分、余計に舞い上がってしまう。


カップを両手で包み込むようにして、一口飲む。


「おいしい。ありがとう」


「いちいち感想の多いやつだな」


「だって口にしないと伝わらないじゃない。そうだ、ねぇ、バルコニーに花を置いてもいい?」


「花?」


「ええ。殺風景で寂しいから」


「好きにすればいい。ここはおまえの家でもある」


ふん、と鼻で笑ってリビングに戻ってゆく泰兄。


私はゆっくりとコーヒーを味わってから、遅めの昼食を作るべくベッドから出た。


いつもこんな調子の私たち。


仕事も順調。


毎日が輝いてる。


でも心の片隅で、お兄ちゃんに申し訳なく思う気持ちがあった。


自分ではその気持ちに気付かぬように胸の端に追いやったはずなのに、時折思い出したかのようにお兄ちゃんの姿がちらつく。


お兄ちゃん…


お元気ですか?


私は今、とても…


とても幸せです…


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