ふたり。-Triangle Love の果てに


一緒に暮らし始めて、泰兄を改めて素敵だと思うところがたくさんある。


まず食事に出されたものを、決して残さないこと。


必ずきちんと手を合わせて、「いただきます」「ごちそうさま」と言うこと。



そんなこと、しそうにないのに…


その上、食事の仕方がとてもきれい。


焼き魚を出せば、最後には骨だけがお皿に残っている、そんな状態。


私の方が食べ方が下手で、恥ずかしくなっちゃうくらい。


おいしい、そんな言葉はないけれど、きれいに空になったお皿を見ると私は作った甲斐がある。


それに彼はよく食事の後片付けを手伝ってくれる。


ふたりキッチンに並んで食器を洗う。


私が濡れた器を手渡すと、彼が布巾で手早く水気をとって棚に戻してゆく。


意外に家事が得意な泰兄。


要領よく、なんでもこなす。


そのことを話すと、「鶴崎組長のところで、かなりしごかれたからな」と当時のことをおもしろおかしく話してくれた。


こうやって、少しずつ彼のことを知る…それがとても嬉しい。


身長は180センチ。


細身だけれど、とても筋肉質。


髪は今よりも少しでも伸びるとすぐに切りたがる。


整髪料は無香料じゃないとダメ。


スーツはひいきのブランドの物のみ。


ネクタイは渋めの色が多い。


タバコはマルボロ。


ご飯は固めが好き。


味噌汁の好きな具は、さつまいもと大根とわかめ。


パンはジャムやはちみつを塗らずに焼いたまま食べる。


濃い目のブラックコーヒーが好き。


お酒は外では飲むけれど、家ではあまり飲まない。


テレビは見ない。


その代わりに新聞を何誌も隅から隅まで読み通す。


唯一苦手なのは、小さい子。


とにかく、どう対応していいのかわからないみたい。


一緒に歩いていても、2、3歳の子が私達に笑いかけてきても気付かないふりをして通り過ぎる彼。


私だけが手を振り返すといった具合。


「どうして知らん顔するの」と訊くと、仏頂面でこう答えるの。


「ガキは苦手だ。突拍子もないことを突然言ったりする。行動が読めない」って。


思わず噴き出してしまった。


そんな他愛もないことを発見するたびに、彼にまた一歩近づいた気がして幸せを感じた。


彼の背中に棲むあの龍の悲しげな目だって、いつのまにか穏やかになったような気がするくらい…

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