ふたり。-Triangle Love の果てに
「シェーカーを振るおまえは、もっと大人の女の魅力に溢れている。凛とした横顔、しなやかな指の動きは、見る者を釘付けにしてしまう。変なやつに言い寄られないか、俺も心配になるくらいにな」
思いがけない言葉に、彼の胸から顔を上げる。
「おまえの名前を付けるカクテルだ。MAKOTOはカウンターに立つおまえにふさわしいものにしろ。それが同じバーテンダーだった親父さんへの最高のプレゼントになるんじゃないのか」
「泰兄…」
「店ではこんな膨れっ面するなよ」
「してないわ」
「どうかな。俺がYesterdayに通ってた時は、おまえはすぐに感情を表に出してたぜ」
「…それは」
それは目の前に座っていたあなたが、私の心をかき乱してばかりいたからよ。
そう言おうとしてやめた。
「それはきっと私がまだまだ未熟だったのよ。でも今は違うわ」
くすっと笑うと、彼の唇が優しく私のそれと重なる。
ねぇ、泰兄。
あなたはとても意地悪ね。
今みたいに私を怒らせる言い方をよくするけれど、なだめるのもすごく上手。
すねた気持ちが、すうっと消えちゃうもの。
それにとても大切なことを気付かせてくれて、胸が熱くなる。
あなたとは年も離れているし、私とは比べ物にならないほどの努力をしてるし、世間の酸いも甘いも知り尽くしている。
あなたのことを少しずつでも知り始めたからといって、私にとってはまだまだ手の届かない存在よ。
あなたに早く追いつけるように、私がんばるから。
先を歩くあなたに少しでも近づきたい。
だから、時々今みたいに振り返っては手を差し伸べて。
すぐにすねてそっぽを向いちゃう子どもっぽい私だけれど、あなたの苦手な小さな子みたいだけれど、仕方ないやつだなって、大目に見て。
好きよ、泰兄。
言葉では言い表せないほどに、あなたを強く深く想ってるわ。