ふたり。-Triangle Love の果てに

「シェーカーを振るおまえは、もっと大人の女の魅力に溢れている。凛とした横顔、しなやかな指の動きは、見る者を釘付けにしてしまう。変なやつに言い寄られないか、俺も心配になるくらいにな」


思いがけない言葉に、彼の胸から顔を上げる。


「おまえの名前を付けるカクテルだ。MAKOTOはカウンターに立つおまえにふさわしいものにしろ。それが同じバーテンダーだった親父さんへの最高のプレゼントになるんじゃないのか」


「泰兄…」


「店ではこんな膨れっ面するなよ」


「してないわ」


「どうかな。俺がYesterdayに通ってた時は、おまえはすぐに感情を表に出してたぜ」


「…それは」


それは目の前に座っていたあなたが、私の心をかき乱してばかりいたからよ。


そう言おうとしてやめた。


「それはきっと私がまだまだ未熟だったのよ。でも今は違うわ」


くすっと笑うと、彼の唇が優しく私のそれと重なる。


ねぇ、泰兄。


あなたはとても意地悪ね。


今みたいに私を怒らせる言い方をよくするけれど、なだめるのもすごく上手。


すねた気持ちが、すうっと消えちゃうもの。


それにとても大切なことを気付かせてくれて、胸が熱くなる。


あなたとは年も離れているし、私とは比べ物にならないほどの努力をしてるし、世間の酸いも甘いも知り尽くしている。


あなたのことを少しずつでも知り始めたからといって、私にとってはまだまだ手の届かない存在よ。


あなたに早く追いつけるように、私がんばるから。


先を歩くあなたに少しでも近づきたい。


だから、時々今みたいに振り返っては手を差し伸べて。


すぐにすねてそっぽを向いちゃう子どもっぽい私だけれど、あなたの苦手な小さな子みたいだけれど、仕方ないやつだなって、大目に見て。


好きよ、泰兄。


言葉では言い表せないほどに、あなたを強く深く想ってるわ。
< 240 / 411 >

この作品をシェア

pagetop