ふたり。-Triangle Love の果てに


高速道路を突っ走ること4時間。


地方にある刑務所。


今日俺たちの組長、橘直人が出所する。


「他の連中も迎えに来たがってましたよ」


勝平がミラー越しに俺をのぞき込む。


「仕方ない。門前は車1台、3人までと決められているからな。それに組長自身、派手なことはお嫌いだ」


「ま、今夜の放免祝いの席で盛り上がりましょう」


俺と勝平、ふたりだけの出迎え。


直人さん自身が望んだものだ。


派手な出迎えはしてくれるな、そう念を押された。


静かに刑務所の門の前に、車が滑り込む。


降り立った俺は、高い塀を仰ぎ見た。


いつか俺もこういう所に入る日が来るかもしれない…そんなことを考えていた。


「あと10分ですね」


勝平が顔に似合わない金時計を見ながら、門を見遣る。


「おい、ネクタイが曲がってるぞ、直せ」


「すみません!」


「ったく、しっかりしろよ」


突き抜けるような青空。


直人さんはこの空を見上げて、一番に何を思うだろう。


もし俺なら…


俺だったなら、きっとこう思うに違いない。


あいつに会いたい…って。


だから直人さんもきっと…


予定時刻ちょうどに、重苦しい音と共に扉が開いた。


俺たちは深々と頭を下げた。


視界に、磨かれた革靴が入る。


「お務め、ご苦労さまでした」


顔を上げると、そこには少し痩せた直人さんが、気恥ずかしそうに立っていた。


「泰輔、おまえの方こそ、ご苦労だったな。傷はもういいのか」


「はい、もうすっかり」


自然に俺の顔もほころんだ。

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