ふたり。-Triangle Love の果てに
~片桐真琴~
今日のゆり子さんはなんだか様子が変。
時間ばかり気にしているし、服装だっていつもと違う。
普段はパンツ姿なのに、今日はフレアスカートにブラウス。
そわそわしているのかと思いきや、ボーッと遠くを見てはため息をつく。
「ゆり子さん」
「え?ああ、ごめんなさい、何かしら」
「今日は何か予定でもあるんですか」
「ううん!別にないわよ」
焦ったゆり子さんの声が裏返った。
もう隠し切れないと思ったのか、彼女は恥ずかしそうに髪を少女のようにいじりながら話してくれた。
「実はね、前に話したでしょう?このお店を出すときにお世話になった方が、今日こちらに帰って来られるの。仕事の都合で地方にいらっしゃったのだけれどね」
ゆり子さんの想ってる人だ。
もうすでに顔が真っ赤。
「その方が、今日ここに?」
「さぁ…とてもお忙しい方だから。きっと無理でしょうね」
そう言いながらも、全身で彼を待ってるゆり子さん。
早く会いたいって、そう言ってるみたい。
「きっといらっしゃいますよ」
「だと…いいんだけど」
いくつになっても恋をしている人はキレイ。
輝いてる。
その人とゆり子さん、これからどうなるのかな。
きっとゆり子さんの片思いってわけないと思う。
だってその人は、彼女のために離婚を勧めたり、このお店を出すのにも力を貸してくれたっていうじゃない。
それに、こんな美人をほうっておくわけないもの。
私も何だか嬉しくなって、ドアベルが鳴る度にドキドキしてしまった。