ふたり。-Triangle Love の果てに
床に落ちたバッグを拾い上げると、私は震える手で鍵を差し込みロックを解錠した。
やっとの思いで、エレベーターに乗り込む。
そこで鏡に映った自分の姿に唖然とした。
髪は乱れ額は切れて血が滲み、口元にはできたばかりの赤いアザがあった。
それだけじゃない。
胸元から十数センチほど服が何筋にも渡って切られていた。
合間から下着が見えている。
怖くて気付かなかったけれど、刃先が当たったのだろう、肌には何本もの赤いみみず腫れができていた。
あまりの姿に、私は口を覆った。
泣き叫びたいのを必死で我慢した。
こんな姿、泰兄に見せるわけにはいかない。
彼のことだ、きっと犯人を血眼になって捜すに違いない。
もしかしたら、またそれが火種となって彼自身が狙われるかもしれない。
そんなことさせられない、絶対に。
私が黙っていれば、うまくごまかしてさえいれば、何も起きなかったことになる。
真一文字に結んだ唇を鏡で確認すると、ちょうどエレベーターのドアが静かに開いた。
玄関に入ると、奥をうかがう。
幸い、彼はもう休んでいる様子。
とにかく着替えて、血を洗い流さなきゃ。
私は一目散に洗面所へと駆け込んだ。