ふたり。-Triangle Love の果てに
「…わかった。そのかわり、勝平をおまえにつける。どこに行くにもあいつと行動を共にしろ。絶対に一人で動くな。わかったな」
一瞬納得のいかない表情をしたマコだったが、俺がよほど厳しい顔つきをしていたのだろう、抗っても無駄だと思ったのか「ええ、約束する」と小さく頷いた。
ようやく彼女を抱きしめた俺。
できることなら俺がずっとそばについていたい。
だが、俺にはやらねばならないことがある。
それがもどかしい。
「ごめんなさい、これからはちゃんと気を付けるから」
「もう何も言うな」
何も言わなくていい。
謝らなくていい。
おまえが悪いんじゃない、俺が全部悪いんだ。
色白の顔を両手で包むと、静かに彼女は目を閉じた。
キスを求めているのはわかっていた。
だけど、俺は小さく首を横に振ると彼女から離れた。
俺は、直人さんのようにはできそうもない。
こいつを危険にさらすかもしれない、そうわかっていても別れることなんてもうできない。
あの夏の別れの苦しみはもういらない。
マコがいない、それだけで心の目が伏せてしまう。
何も感じなくなる。
もうあんな想いをするのはごめんだ。
こんな俺の愛し方は間違っているのか?
それともこの世界に身を投じた罰なのか?
マコの哀しげな目が、キスをしようとしない俺に注がれていた。