ふたり。-Triangle Love の果てに


彼女の後を追いながら、勝平に連絡を入れる。


「俺だ。車を取りに来い。駐禁取られるなよ」


そう言って車を停めた場所を告げると、俺は再びアリアを追って走り出した。


「待ってください」


…って、待つわけないか。


後ろ姿だけを見ても、怒り心頭というのがオーラになって出ている。


だからガキだって言われるんだよ。


「マリアさん」


彼女に追いつき、前に回り込むとようやくあのヒールの音が止んだ。


「あたし、こんな侮辱初めてよ。きっと後にも先にもないわ」


眉間に皺を寄せたところなんか、ますますルリ姐さんにそっくりだ。


「侮辱?」


「そうよ、お義兄さんに言いつけてやるから!」


お義兄さん、鶴崎組長のことだ。


「かまいませんよ、お好きになさってください。ただ、あなたに言われたように俺は本心を言ったまでです」


「ああっ!もう、うるさい!」


ハエを払うように手を振ると、マリアは歩き出した。


俺も仕方なくついて行く。


初めのうちは勢いよく歩いていたものの、当然道もわかるわけもなく次第にペースが落ちていった。


時にマリアは辺りをキョロキョロする。


道を尋ねようと通りかかった人に声をかけようとするも、タイミングが合わず誰にも気付いてもらえない。


その様子がおかしくて噴き出した俺を、それはそれは恐ろしい顔で振り返った。


所詮まだ子どもだ。


そうやって意地を張り続けること1時間。


さらにゆっくりになっていた歩調がぴたりと止まった。


目をやると、車道と歩道を隔てる縁石に座りうなだれている。


すぐそばを大型トラックやバイクが猛スピードで通過していく。


危ないやつだな。


内心舌打ちをしながら、俺は彼女に歩み寄った。


「どうかされましたか」


案の定「別に」とソッポを向く。


「とりあえずここは危険ですから、こちらに」


幸いにも近くにバス停があったので、そこのベンチに座らせる。

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