ふたり。-Triangle Love の果てに


「本当かしら…昨日あなたは…」


だめ、胸が苦しい…


「あなたは本通りで、私の知らない女の人と…」


彼の手が止まった。


「見ちゃったの」


涙は止まらない。


ぬぐってもぬぐっても溢れ出てきて、目の前の彼の姿でさえ曇ってしまう。


「ねぇ、何か言って…」


お願い、あの人とは何もなかったと言って。


だけど、泰兄は伏し目がちに首を振ると、「すまない」とだけ言った。


すまないって何?


なんで謝るの…!


ということは、やっぱり…


私は彼の前に立つと、思いっきりその頬を引っぱたいた。


「ひどいわ!」


「何をする!」


その手首をつかみ、彼はつりあがった目で私をにらみつけた。


「最低よ」


「何だと?」


「あなたみたいな人、最低って言ったのよ。聞こえなかった!?」


泰兄はつかんだ私の手首を強引に引き寄せると、顔を近付けて言った。


「男にはやらなければならないことがある。たとえそれが俺の意に反することであっても、おまえを傷付けることであってもだ」


「だからあの人と関係を持っても仕方ないと…?」


彼は答えなかった。


でもそれが全てを肯定しているようだった。


「そんな…」


「俺を最低だと思うのなら出て行けばいい。止めはしない」


そんな冷たい声が降ってきたかと思うと、彼は激しくドアを閉めて部屋を出て行った。



泰兄…


泰兄…


胸が痛い…


心が壊れてゆく…


どうして?


私はあなたを愛したからここにいるのに。


あなたと共に生きたいと願ったから、そばにいるのに。


どうしてこんなひどい仕打ちをするの?


泰兄…


< 289 / 411 >

この作品をシェア

pagetop