ふたり。-Triangle Love の果てに


次の日も、またその次の日も、マコがバルコニーのしおれた花の前で泣いている。


花がそういう状態だから、ではない。


その涙の原因は「俺」だ。


この頃冷たい態度をとる俺に絶望してるに違いない。


どうすればいいんだ?


こんなにも愛してるのに…


愛すれば愛するほどあいつを傷付けていくような気がして、どうにかなりそうだ。


マコを危険な目に遭わせてしまったという罪悪感。


そしてマリアのことを言い訳しない俺に対して募る、彼女の不信感。


それが俺を苦しめる。


いつもあいつを抱きしめながら眠っていたのに、今はそれすらつらい。


隣にある寝顔を見るたびに、まだ少し残る額の傷と口元の薄くなったアザが俺の胸を刺す。


気がつけば逃げるようにして、彼女に背を向けていた。


するとあいつは俺の背中にすがりつくように、すすり泣く。


声を殺しながら…


その細い指が背中の中心を何度も撫でる。


それが何だか俺にはわかっていた。


マコは龍の目を触っているんだ、と。


「寂しそう」、初めてこの刺青を見てそう言った彼女。


その瞳にどんな思いで触れているのか。


向き直って抱きしめてやればいいものを、俺はしようとはしなかった。


何日も何日も。


距離を置くべきなのは重々承知だ。


俺のそばにいる限り、あいつは圭条会の相原泰輔の女として敵対する須賀一家などから格好の標的にされることとなるだろう。


だが、わかっているのに…俺が離れられない。


一緒にいても、こうやってマコを泣かせてしまうだけなのに


やはりそばにいてくれないとだめだ。


あの猫のような艶のある瞳で俺をみてほしい。


たとえそれが涙で曇っていたとしても。


俺の名を呼んで欲しい。


たとえそれが悲しみで震えていたとしても。


俺の胸の中にいてほしい。


たとえ途中で俺が背を向けてしまっても。


そんな勝手な願いを胸に秘めながらも、今夜も俺は彼女に優しい言葉すらかけられない。
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