ふたり。-Triangle Love の果てに


高雄との打ち合わせを終えて、俺は橘組の事務所に向かった。


手続きを完了したことを報告するためだ。


そこでは珍しく神妙な面持ちの直人さんがいた。


「どうかなさいましたか」


彼は目を伏せたまま「浩介の工場がほされた」と言った。


「さかいオートが?なぜです」


驚きのあまり声が上ずる。


「暴力団関係者とつながりがあったということで、銀行からの融資が止められた。そんな話が出たんだ、得意先も皆失った」


「そんな…」


俺たちのせいか?


俺たちが浩介さんのところによく出入りしていたから…


「さかいオートに行ってきます」


「やめておけ。もう遅い」


そんな直人さんの言葉を振り切って、俺は浩介さんの整備工場に向かった。




閑散としたガレージ。


誰もいない。


ただ事務所の明かりがぽつんと点いているだけだ。


「浩介さんっ」


ノックもせずにドアを開けると、奥に佇む人影が振り向いた。


「よう、泰輔か」


「浩介さん、こんなことになってしまって…」


「ああ」何もかも納得しているからいいんだ、そんな感じで彼は笑った。


「仕方ないだろ、暴力団排除条例ってのができて、世の中がそういう動きになってんだからよ」


「だからって銀行が融資まで断つことはないでしょう。浩介さん自身は組員じゃない」


「元組員だけどな。しかも今じゃ現役と関われば即アウトってご時世なんだよ」


俺は唇を噛みしめた。


「申し訳ありません、俺たちのせいで」


深々と頭を下げた俺を見て、浩介さんは人懐っこい笑みを返してきた。


「違うって、おまえらが悪いんじゃない。時代がこうなっただけなんだって」


「…浩介さん」
< 294 / 411 >

この作品をシェア

pagetop