ふたり。-Triangle Love の果てに
高雄との打ち合わせを終えて、俺は橘組の事務所に向かった。
手続きを完了したことを報告するためだ。
そこでは珍しく神妙な面持ちの直人さんがいた。
「どうかなさいましたか」
彼は目を伏せたまま「浩介の工場がほされた」と言った。
「さかいオートが?なぜです」
驚きのあまり声が上ずる。
「暴力団関係者とつながりがあったということで、銀行からの融資が止められた。そんな話が出たんだ、得意先も皆失った」
「そんな…」
俺たちのせいか?
俺たちが浩介さんのところによく出入りしていたから…
「さかいオートに行ってきます」
「やめておけ。もう遅い」
そんな直人さんの言葉を振り切って、俺は浩介さんの整備工場に向かった。
閑散としたガレージ。
誰もいない。
ただ事務所の明かりがぽつんと点いているだけだ。
「浩介さんっ」
ノックもせずにドアを開けると、奥に佇む人影が振り向いた。
「よう、泰輔か」
「浩介さん、こんなことになってしまって…」
「ああ」何もかも納得しているからいいんだ、そんな感じで彼は笑った。
「仕方ないだろ、暴力団排除条例ってのができて、世の中がそういう動きになってんだからよ」
「だからって銀行が融資まで断つことはないでしょう。浩介さん自身は組員じゃない」
「元組員だけどな。しかも今じゃ現役と関われば即アウトってご時世なんだよ」
俺は唇を噛みしめた。
「申し訳ありません、俺たちのせいで」
深々と頭を下げた俺を見て、浩介さんは人懐っこい笑みを返してきた。
「違うって、おまえらが悪いんじゃない。時代がこうなっただけなんだって」
「…浩介さん」