ふたり。-Triangle Love の果てに
「そう言えば、北村さんはどこに異動になったの?」
俺もご飯をかきこみながら何の気なしに訊くと、彼女はピタリと手を止めうつむいてしまった。
え?俺、なんかマズイこと言ったかな…
「あ、ごめん。余計な詮索、だったかな」
しどろもどろに謝るも、彼女は顔をあげない。
参ったな…
俺は箸を置いた。
「えっと、北村さん?」
「県警担当なんです。県警記者クラブ…」
「え?」
「次の異動先…」
ああ、なるほどね、それで…
「苦手なんです、ああいう事件を追いかける第一線って感じのところ。先を読んで行動しなきゃいけないし。私にはできそうもありません」
そこまで言って、顔の前で手を振りながら慌てて付け加える。
「何も地域面担当がのんびりしてるだとか、そういうんじゃないんですっ」
必死の形相の彼女に思わず苦笑。
まぁ俺は地域面の古株だから…と内心つぶやく。
「私、今の部署が好きだったから、余計に行きたくなくて」
次第に小さくなる声。
俺はテーブルに備え付けられているポットに手を伸ばした。
空になっている彼女の湯飲みにお茶を注ぐ。
「大丈夫だよ、北村さんなら」
「…そうでしょうか」
「うん、君は自分が思っている以上にテキパキしているし、頭もきれる」
腑に落ちない顔で彼女は俺をまじまじと見てくる。
「大丈夫だよ」
俺は念を押すように言った。