ふたり。-Triangle Love の果てに
馬鹿馬鹿しい。
北村翠が俺に気があるだって?
そんなこと、どうでもいい。
俺が愛するのはただひとり…
後にも先にも…
いや、待てよ。
確か彼女は県警担当だったよな。
俺の頭の中に、どす黒い何かが渦巻き始めた。
使えるかもしれない。
俺は目の前の山積みの書類の間から、彼女の様子をうかがった。
アップにした髪が、より彼女を知的に見せる。
俺の視線に気付いたのか、北村翠はこっちを見た。
目が合う。
すると満面の笑みで、ゆっくりと会釈をしてきた。
俺も小さくうなずくと、ちらりと横を見た。
ひいひい言いながらペンを走らせている後輩。
彼の言うことは全くの見当違い、というわけでもないのかもしれない。
もし彼女が俺に特別な感情を抱いてくれているのなら…
俺は黒のファイルの中身を思い出していた。
圭条会を追い詰めることができるかもしれない…
半月もしないうちに、俺たちはお互いを勇作、翠、と呼び合うようになっていた。
そして胸の中には、全てを俺に委ねた一糸もまとわぬ彼女の姿があった。