ふたり。-Triangle Love の果てに

鶴崎家に着くと、何の事情も知らないルリ姐さんが笑顔で俺を出迎えてくれた。


「泰輔、よく来てくれたわね。さ、あがりなさい」


失礼します、と靴を脱ぎ手みやげを渡した。


応接間へと案内されると、健吾さんが「おはよ」と軽く手をあげた。


「さっきも会ったけどね」


「おはようございます。この度はご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした」


頭を下げる俺に「彼女は大丈夫だった?」と訊く。


「ええ、本当にありがとうございました」


「よかった。それより座れば」


向かいの席を勧められて腰を下ろすと、ルリ姐さんがお茶を持って入ってきた。


「健吾ったら、今朝早くに突然帰ってきたのよ。びっくりしたわ。もっと家に顔を出すように泰輔からも言ってやってちょうだい」


そうですね、と俺は曖昧に頷く。


「主人はもうすぐ帰ってくるから、待っててちょうだい」


盆にのせた湯呑みは3つ。


ルリ姐さんもここでしゃべる気満々のようだ。


3つ目の湯呑みをテーブルに置く前に、健吾さんが言った。


「母さん、ちょっと席を外してくれないかな。泰輔と話があるんだ」


「まぁ、何。母さんはいちゃいけないの」


「男同士の話なんだってば。察してよ」


「はいはい」と笑いながら盆に湯呑みを一つだけのせて、ルリ姐さんは応接間を出て行った。


「ね、窓の外を見てごらんよ」


レースカーテンの引かれた大きな窓の向こうには、芝を敷き詰めた広い庭があるのは知っている。


だがそこは有刺鉄線の張り巡らされた高い塀に囲まれている上に、木々が繁っていて外からの視線を徹底的に遮っている。


それだけ敵が多いということだ。


「早く見てみなよ。泰輔にプレゼントがあるんだからさ」


「プレゼント?」


「うん、そう。だから早く」


急かすように顎をしゃくる。


俺は窓際に立つと、10センチほどレースカーテンをあけた。


「これは…」


彼からのプレゼントに言葉がスムーズに出てこない。


「気に入ってもらえた?」


「…どうして」


「あんたがここに来る前に締め上げて吐かせておいたよ。時間は有効に使わなくっちゃ」


健吾さんはそう言って、レースカーテンを大きく開けた。


そこには目が覚めるような青々とした芝の上に、ふたりの男が横たわっていた。


顔中アザだらけのまま気絶しているのか、ピクリとも動かない、


「彼女を狙ったやつらだよ。言ったよね、うちの組の若い衆だって」


ええ、と俺は頷いた。


「あっさり吐いたよ、誰に頼まれてあんなことをしたのか」


「一体誰です」


思わず身を乗り出す。

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