ふたり。-Triangle Love の果てに


「京香が?…なぜ」


「さぁね。でも黒幕がわかったんだから、早く手を打ちなよ。使ってた男が捕まったってわかれば、その女だって逃げちゃうよ」


健吾さんは庭に目をやる。


燦々と太陽の光が降り注ぎ、あたりは金色の海だ。


「あーあ、意外と単純な結末だったな。鶴崎組と橘組の確執か、ってちょっとおもしろそうだったのに、女の単なる妬みだなんてさ。あの男たちもあんたにやるよ。好きなようにしていいから」


俺の表情を見た健吾さんは小さく笑うと、「さてと」と膝の破れたジーンズのポケットに手を突っ込み、背を向けた。


この口元がしだいに緩む。


彼もマコを深く想っているに違いない。


あいつには笑っていてほしいと、心からそう願っている。


だからわざとあんな挑発的な条件を出して、俺の気持ちを試そうとした。


「ありがとうございました」


部屋を出て行くその背中に、俺は深く腰を折った。


「大切にしてあげてよ」


「肝に銘じます」


納得したように頷くと、「じゃあ、俺はもう行くよ。朝からあいつらを締め上げてて寝てなくってさ」と肩をすくめる。


俺はゆっくりと顔をあげた。


「健吾さん」


ドアノブに手をかけたまま、「んー?」と首だけをこちらに向ける彼。


胸を張った俺は言った。


あえて、こんな言い方で。


「二度と俺の女に、変な真似するんじゃない」


すると彼は「ああ、あのことね」と何かを思い出したように頷くと舌を出した。


「バレてた?彼女にキスしようとしたの」


「ああ」


「もうしないよ。また昔みたいに泣かされたらたまんないし。じゃ」


ひらひらと宙で手を泳がせると、彼は静かに出て行った。


その閉じられた重厚な扉に向かって、俺はもう一度頭を下げた。

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