ふたり。-Triangle Love の果てに
泰輔兄さんと高雄がつながった。
憶測の域を超えなかったものが、じわりじわりと姿を現してゆく。
そのことを翠に話すと喜んではくれたが、どこかぎこちない微笑みを返してきただけだった。
それに気付かないふりをして、俺は彼女を抱きしめる。
「もう少しだよ、もう少しでスクープがとれる。君のおかげだよ」
この胸の中で一瞬身を強ばらせる翠。
その時俺は何もかも悟った。
ああ、この女はあの浅井という刑事に身体を差し出したな、って。
いつでも有力な情報を引き出せるように、そしてその情報源である彼を引き留めるためにこの身を捧げたのだろう。
ほかならぬ俺のために。
だけど、俺の心は少しも痛まなかった、と言えば嘘になるかもしれない。
俺のやってることが彼女の犠牲の上に成り立っていることを痛感して、正直情けなくなった。
恋人がそこまでして、こんな俺に尽くしてくれている…と。
だがすぐにそんな感傷は打ち消す。
泰輔兄さんへの憎しみが、俺をこんなふうにしていた。
真琴への執着が、俺を最低な男にしていた。
「翠」
事情を知らない鈍感な男を演じながら、俺は彼女を抱いた。
涙を堪えながら俺に抱かれている翠を見ていると、無意識のうちにいたわるような優しいキスを繰り返していた。
すまないという懺悔の気持ちと、仕方ないんだという自分を擁護する気持ちの狭間で、彼女を抱いた。
そうやってかき集めた情報が、この目の前の黒いファイル。
あと少しだ。
決定的な証拠は俺がつかむ。
…真琴
俺はおまえから愛する男を奪うことになるだろう。
恨みたければ恨め。
忘れられるよりは恨まれても心のどこかで覚えていてくれたほうが、幾分かマシだ…。