ふたり。-Triangle Love の果てに
黄色や白の細長い花弁が宙を舞う。
そしてバサバサッとその容姿からは想像もつかないくらいのがさつな音を立てながら、花は地に落ちていった。
確かにあなたは優しい人だった。
無口で、誰にも心を開かないせいで誤解されるようなところもあったけれど、本当は誰よりも愛深き人だった。
そのことを俺はよく知っている。
同じ屋根の下で寝食を共にしたのだから。
真琴があなたに惹かれ、愛する理由もわかる。
ただひとつのことをのぞいては…
圭条会の一員であること以外は…
それだけは絶対に俺は受け入れられない。
だから…
「決めましたよ、俺」
まっすぐに泰輔兄さんを見据える。
「金輪際、俺はためらわないし迷わない。そして立ち止まらない」
そう言うと、彼の前に立った。
「俺と真琴、男と女としてすれ違う運命なら前に突き進むだけです。たとえどんな結果になろうともね」
眉を寄せる泰輔兄さん。
「俺なりの宣戦布告だと思ってください」
彼の濡れたスーツについた黄色の花びらをつまむと、俺は踵を返した。
「必ずあなたから真琴を取り戻してみせます。あいつが俺のところに戻ってこなくても、あなたたちふたりを引き裂いてみせますよ」
そう言い残して、吹く風に揺れる仰向けになった傘を拾うと、わき目も振らずにその場を後にした。
駐車場では、真琴が心配そうな顔つきで立っていた。
目が合うなり何か言いた気に唇を動かしたが、あえて無言で彼女の前を通り過ぎた。
そんな俺を見て泰輔兄さんに何かあったのではと思ったのだろう、慌てて墓地へと真琴は駆けていった。
水溜りの中をためらいもなく走ってゆく足音を背後に感じながら、俺は正直ショックだった。
ここまであいつの心が泰輔兄さんに向いているとは…
なぁ、真琴。
俺はとことん泰輔兄さんを追い詰めるよ。
たった一人の家族を奪われた俺なりの復讐だ。
あの人が現れなければ、
あの人がおまえの心をとらえることさえなければ、
俺たちは兄妹として、うまくやっていけたはずだった。
おまえの愛した人が泰輔兄さんでなければ、俺のこの想いはずっと心の奥底にしまっておけたはずだった。
結婚だって祝福できただろう。
すべての原因は…
そう、おまえの愛した相手が相原泰輔だということ。
なつみ園で幼かったおまえの心をわしづかみにし、俺をやきもきさせた。
そして今、彼はおまえの身も心も…全てを手に入れた。
彼でなければ…
彼でなかったならば…